ジョンでーす!
今回はここ、西船橋にある「船橋市西図書館」に来ています!
なんとこちらでは、日本初!「ドローンによるAIを使った蔵書点検」のプロジェクトが進行中とのことで、
3月12日にその実証実験が執り行われましたー!
…
…
…ドローンドコー…
はい。スミマセン。
ワタシ、実証実験見てないんですよ。
取材のタイミング合わなくて…トホホ。
ここでどんな実験が行われたかと言いますと、主役はドローンの「IBIS(アイビス)」ちゃん!
アイビスは株式会社Liberaware(リブラウエア)さんが開発した「世界最小クラスの産業用ドローン」とのこと。
このアイビスちゃんが書棚の間を飛んで、本の背表紙を自動撮影し、背表紙のデータと、予め登録された対象の書棚の範囲の蔵書データを画像解析AIに取り込んでマッチングさせ、蔵書の点検を行う、というものでした。
「AI蔵書点検システム」は公共図書館システム「ELCIELO」と画像解析AIを組み合わせたシステムで、京セラコミュニケーションシステム株式会社さんが提供しているとのことで、なんかもう、「図書館」というお堅いイメージのある施設の中で、こんな最新鋭実験が行われたとなると、ワクワクしちゃいますよね。
あー、ワタシもアイビスちゃん見たかったー。
と、悔やんでいても仕方がない。
しかし、ドローンが飛んでなくても話は聞ける!
船橋が近未来都市への一歩を踏み出すのか?
実証実験の手ごたえはどうだったのか?
船橋発の最先端AI技術を探るべく、西図書館へお邪魔しました~!
お話していただいたのは、西図書館の企画事業係主事の阿部さんです。
阿部さんよろしくお願いしまーす!
ジョン:それでは早速、今回の「ドローンを使ったAIによる蔵書点検」が導入されたいきさつについて教えてください。
阿部さん:船橋市でAIを取り入れた事業に取り組んでいる中、図書館でも何かできないかな?と思っていたところに、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)さんが「AIによる蔵書点検」というプロジェクトのなかで、「タブレットを使って撮影した画像を使って蔵書のマッチング作業をする」というシステムを開発していることを知り、図書館業務の中で「蔵書点検」の効率化が一つの課題であったので、一緒に実験をしてみたいと声をかけたのがきっかけです。
プロジェクトの実証実験の段階から参加することで、実際に作業効率が上がるのか、現場の運用に耐えうるものなのか等、その辺が分かればいいな、と思った次第です。
ジョン:あ、最初はドローンじゃなかったんですね。
阿部さん:ドローンは実は最終到達点なんです(笑)
KCCSさんも最初はタブレットだけの運用を考えていたのですが、千葉市にある株式会社Liberaware(リブラウエア)さんが、ドローンを使っての運用をKCCSさんへ持ち掛けて、じゃあ、三者でやってみよう、という話となりました。
実際にドローンを使って蔵書点検が可能であれば、ドローンを夜間飛行という形で運用し、日中に人手を割いて点検しなくても画像データの照合を行うことが出来るので、将来的に作業時間をうまく使える可能性が見いだせます。
ジョン:いま「スマート自治体」を目指して全国の自治体がAIを活用したプロジェクトを推進している流れになっていますよね。船橋市でもAIを取り入れた窓口業務などがありますが、例えば窓口業務などでのAI活用はないのですか?
阿部さん:本の貸出や、本の選定・発注や受入れ作業は、実はAI化には向いていないのです。
AIを活用するには、AIに「図書館の仕事」をたくさん学習させないといけないのですが、船橋市内の4つの図書館のデータを合わせてもAIを育成するには足りず、かといって、全国から図書館作業のデータを集めようと思っても、自治体ごとに図書館の運用方法が違うので、学習しきれないという側面がありました。
ジョン:そんな事情があったのですね。
阿部さん:一方で、今回のAIを使っての蔵書点検は本の背表紙を使ってAIに学習させます。
本の背表紙は、人の流れ関係なしに全国どこの図書館でも共通したデータですからね。
ジョン:確かに(笑)
阿部さん:そして、この時間帯でこの角度からだと本は光に照らされる、みたいな「本のコンディション」をAIに学習させていくのです。
特に、夜中に本を置いてある状況はどの図書館も変わらないので、このAIによる蔵書点検システムは図書館的にも「使えるシステム」だなと思いました。
ジョン:なんでもかんでもAI化にできるってわけじゃないんですね。
阿部さん:いろいろ検討しましたが、図書館でのAI化やRPA化は難しいな、と感じました。
図書館の仕事は、人の目や人の手を使って管理するものが多く、また、一つ一つの件数母体が少ないけれど、作業工程はとても多いことが特徴です。
通常、A~Eまで工程のある作業をAIに任せるとするとA~DまでをAIにまかせ、仕上げは人の手で、という感覚ですが、図書館の作業の場合、手順が複雑すぎて、それが当てはまらないのです。
ジョン:えっと、さっきからお話を伺ってると、おそらくワタシが想定しているよりも図書館のお仕事ってたくさんあるっぽいんですが。
阿部さん:そうなんです。結構多いと思います(苦笑)
ではちょっとこの辺で「図書館のおしごと」を見てみましょう
【図書館の基本のおしごと】
・資料の貸出しと返却の窓口業務
・所蔵資料の選定と発注
・所蔵資料の保存と管理
・本のリクエストと予約の登録業務
・図書館利用者の登録・説明
・利用者からの問合せ対応業務
・資料のレファレンス
・蔵書点検
・イベントの運営
ジョン:ふええ。結構ありますね。どのお仕事も大変かと思いますが、特に大変な作業はどの辺ですか?
阿部さん:まずは「所蔵資料の選定と発注」ですかね。選書業務と言いますが、どんな本を選ぶべきか、図書館の質が問われるところなので気が抜けません。
ジョン:なんでもかんでもってワケにはいきませんものね。
阿部さん:あとは、レファレンス業務です。資料に関しての質問や利用者の求める資料を探す業務ですが、質問の内容によって時間がかかる場合もあります。
ジョン:そしてお休みの日には蔵書点検もあると。
阿部さん:「特別図書整理期間」という期間を設けて、蔵書点検を行います。
ジョン:あら図書館ってば連休とってる、って日じゃなかったんですね(汗)
阿部さん:西図書館にある26万7千点の蔵書全てを、30人の職員で5日~7日かけて行います。
ジョン:26万7千点!!
阿部さん:船橋市内4つの図書館と13の公民館等図書室を合わせると、約160万冊あります。
基本、蔵書点検は、一冊ごとについてるバーコードやICタグを人の目と手で確認して、図書館で持っている本のデータを一致させる作業をします。
ジョン:それを5日~7日かけて実施するということですね。
阿部さん:図書館にある本は全て市の大切な財産ですからね。状態を維持するためにも、蔵書点検は大切な作業なので、きちんと管理していきたいのです。
ジョン:これらの作業がドローンで可能なら、かなり助かりそうですね。
阿部さん:一冊ずつのチェックがなくなるので、その点は楽になります。
ただしあくまでもドローンが担うのは一次作業です。この行程を早くすることによって、不明となった資料を探す作業に充てられます。
ジョン:実際に、今回の実証実験の手ごたえはどんなカンジでしたか?
阿部さん:そうですね。このプロジェクトはあくまでも「実証実験」であり「試験導入」ではないんです。
「一年かけてどこまで可能性を広げるか」が重要で、現段階では「ドローンが飛んだ」というスタート地点。
飛ぶのは最低限クリアする条件で、大切なのは「ドローンがちゃんと飛んで蔵書点検ができるか」という話になります。
なので「まだまだ」というのが感想ですね。
ジョン:確かに。ドローンが飛ばない日だってあるかもしれませんものね。
阿部さん:担当者同士の話では「失敗してもいいくらいの気持ち」でチャレンジしています。
そうでないと、新しいものは生まれない。今回のドローンを使ったAIによる蔵書点検はそんな意味での挑戦でもあるのかなと思っています。
ジョン:いわゆるトライアル&エラーですね!
阿部さん:ドローンがダメならタブレットでの蔵書点検を導入してもいいし、これまでの作業効率の在り方を見直してみてもいいし、やり方はいろいろあります。
その一つの模索としての実証実験なので、この方法でいい結果が出たら試してみる価値があるんじゃないかなと。
今回の実証実験は、「結果を出す実験」ではなく「可能性を見つける実験」であった、と思います。
ジョン:確かに。ワタシもお話しを聞いて「可能性」にワクワクしました!
阿部さん:実は今回の実験は船橋市以外ではやってないので、日本初の実験だったんですよ!
西図書館の実験の結果次第では全国の図書館に可能性が広がります。
ジョン:巷では「AIの発展によって人々の仕事が奪われる」という意見も聞かれますが、阿部さんは今回のAIの運用方法についてどう思われますか?
阿部さん:人員削減ではなく「仕事の補助ツール」であり、ほかの仕事の精度を上げようという考えですので「仕事がなくなる」とは違うと思います。
もっと可能性を広げるためにも、積極的に挑戦していきたいと思います。
ジョン:ですよね!ありがとうございました~。もし第二回目の実証実験があるなら、今度こそアイビスちゃんが飛ぶ姿を見たいと思います!
西図書館のチャレンジ、今後どんな可能性が広がるでしょうか?
是非とも追跡取材したいと思います!
ではまたお会いしましょ~。
【参考動画】
【株式会社Liberaware】2020船橋市西図書館にて蔵書点検の無人化に向けた実証実験の取り組み